お墓にはあなたは居ないけど
命日が近づく。
あの日の景色が甦る。
黄色いイチョウの葉が道いっぱいに散っていた。
悲しみを現したようなグレーの空。
命日はお墓参りに行く。
きっと、彼のことを思う人達も行ってくれているのだろう。
生花が手向けられているから。
「パパ、ありがたいね」
皆、あなたを思い出して、会いたいなと思っているんだろうな。
私みたいに。
彼への感謝とともに、生きている自分の苦しみを伝えにお墓参りをする。
お墓がない方がいいと言うひとがいる。
自分が亡くなったら散骨してほしいとか・・・。
でも、
残った人にとっては、お墓がよりどころになるんだよ。
お墓にはお骨しかないけど、なんだか行けば楽になる場所。
自分と故人をつなげる場所。
日本の仏教には三回忌とか七回忌とか法事があるけれど、
あれは、故人の為の供養のためだけではない。
残された人達の悲しみを癒す大切な区切りの行事なのだ。
あれから何年が過ぎたとか、
残された子供達が、今はこんなに大きくなったとか、
あなたが逝ってしまってから、いろんなことがあったのよとか、
あなたのいない時間がどんなに空しいものなのかとか。
そんな思いを伝える行事。
亡くなった人も一緒に参加しているような気がする。
お墓はあの世に行ったあなたに、こちらから会いに行ける大切な場所。
いつか、私も入るんだものね。
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